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第2話:龍虎相まみえる

虎の背に揺られ、明が辿り着いたのは本堂の巨大な屋根の上だった。
眼下に広がるのは、デジタルノイズの海に沈んだ浅草寺の境内。そして、目の前には、黄金の鱗を不遜に輝かせるとぐろを巻いた「龍」が待ち構えていた。

「おい、見たかこの小僧を! こんな弱そうなガキを連れてくるとは、虎、お前の審美眼も落ちたものだな(Sad!)。こいつは敗北者(Loser)の顔をしているぞ!」

龍は空を泳ぎ、明の耳元で毒を吐き続ける。

「いいか小僧、騙されるな。その虎はお前を『生贄』にするつもりだ。今のうちにそのスマホでこいつの眉間を撃ち抜け。今すぐだ! 期限はあと10秒、いや、今すぐだ! さもなくばお前を隅田川に沈めるぞ!」

虎は一歩も引かず、ただ喉の奥で地鳴りのような唸りを上げた。
「……龍。騒がしい脅しが得意だな。小僧、その耳を信じるか、眼を信じるか。貴様の『心』をここで示せ」

殺気が、氷の刃となって明の肌を刺す。龍の理不尽な要求と、虎の絶対的な圧力。現実世界のいじめっ子たちとは比較にならない、巨大なパワーの衝突。

System Notification [Risk Analysis]
アアア……解析不能……。
【警告】右の虎は「腕力」でオマエを試している。
【警告】左の龍は「饒舌」でオマエを試している。
レンダリング・エラー:どちらが強いでしょうか?

明は、答えなかった。
叫びもしなかった。

暴力が嫌いな彼は、龍の唆しにも乗らず、虎の殺気にも屈しなかった。ただ、静かに二人を見つめ、スマホを強く握りしめた。

「…………」

明の「深い沈黙」が、周囲のノイズを飲み込んでいく。饒舌だった龍がふと口をつぐみ、虎の殺気が霧のように消えていく。

風が止まり、世界の色彩が反転したかのように静まり返った。

── ズゥゥゥゥン。

沈黙を切り裂き、本堂の奥から「巨大な足音」が響き始めた。